1997年10月16日号

「反日感情」について、ある韓国人の見方


ソウルに戻ってきて、生活の調子が出ないと感じておりました。 やはり韓国では仕事のあとに真露やマッコリなど、現地の酒を飲まないと調子が出ません。 昨日は終業時間近くになってから、韓国人同僚を誘ってみました。 突然だったので、一人しか都合がつきませんでした。 結局、日本人対韓国人が1:1になり、かえって突っ込んだ話ができましたので、一部を紹介します。

彼はソウル大学、大学院修士卒業で、約40歳です。 専攻は工学ですが、歴史や社会学の本を読むのが好きだそうです。 以前書きましたように、40歳の年代層としては飛び抜けて高学歴のインテリです。 ここではA氏としておきます。

以下にA氏の発言趣旨をまとめました。

日本語を話せる世代について
およそ65歳以上の年代であり、父親の世代である。 日帝時代を経験しており、 当時、日本人から理不尽な目に遇わされた経験を持っている世代である。 しかしながら、「あまりにも理不尽な扱いを受けたがゆえに、 冷静な目で日本や日本人を分析できなくなっている」。 韓国では年長者を敬う儒教精神が強いため、この世代の社会的な発言力は結構強い。 したがって、この世代からの影響が日帝時代を経験していない世代に対しても日本人に対する冷静さを失わせる結果となっている。 これは、今日の韓国の問題点のひとつだと思う。

日本の技術志向について
日本人も韓国人も何万年か前に中国大陸北部から移動してきた人種であり、 同じ血が流れている(注:呉 光朝は、日本人はその他に太平洋地区からの人種も混血しているように思っています。 子音は「ん」を除いて必ず母音を伴っているのがその理由です。 4月20日号参照)。 大昔の中国北部の人種は技術が高かったと思わせる発掘物も多い。 従って、韓国も日本も当時は技術志向があったのではないか。 しかし、その後の国情や政治の違いで、日本は技術志向をさらに強めたのに対して、 韓国は技術(者)軽視になってしまったのではないか。 まさに、人種よりも環境/社会/歴史の違いが、現在の日本人との違いに決定的に効いているように思う。 豊臣秀吉の侵略のときに陶磁器製造技術者が多数、日本につれていかれたが、日本のある藩では陶磁器ビジネスで財政が大いに潤ったと聞いている。 これらの人は、こちらにいるときよりも特殊技術者として優遇されたのかも知れない。


まあ、酒を飲みながらの話ですが、韓国人も「話好き」ですね。 それにしてもA氏から5月31日号の「氏より育ち」と同一趣旨の話が聞かれたのは印象的でした。 あと、私にとって考えなければならないのは、「日本人の過去のことがあるために、韓国を冷静に見られない」 ことがあるのではないかと言う自問です。


今日の昼食は「デリカテッセン」にしましたが、そこの社長と話していて、またまた同一趣旨の発言があり、驚きました。 「日本人と韓国人は同じ人種だ。 儒教を一生懸命やった韓国とやらなかった日本ではこんなに違ってしまった。 でもこれから仲良くやって、さらに南北統一したら、合計で2億人のアメリカにもまけない一大経済圏ができる」。 彼は日本語が喋れる世代ですが、こう言う人もいるのです。

なんか私は運がいいのか、「いい人」ばかりと知り合いになれるようです。


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