1998年2月7日号
「コレアン・ドライバーはパリで眠らない」、読後感

ある読者の方が、ソウルの独り暮らしは寂しいだろうと1冊の本を送ってきてくれました。 何と私が8月31日号で紹介した週刊誌の書評紹介に書いてある「コレアン・ドライバーはパリで眠らない」 (著者:洪 世和、翻訳者:米津篤八、みすず書房)でした。

8月31日号では「週間文春」に掲載された書評を紹介しただけで、私自身が読んでいなかったのですが、 今回、実際に読むことができましたので、私なりの感想を書きます。



韓国では京畿高校(K)からソウル大学(S)を卒業した人のことを「KSマーク」と呼び最高のエリートとされている。 昨年末の大統領選挙で善戦し、惜しくも破れた李会昌氏はまさにKSマークで、しかもソウル大学法学部を一番の成績で卒業した大変なエリートであるそうです。 今回の著者も、KSマークであり、「活動」せずに、普通の生活をしておれば、−−いや、活動したとしても韓国にとどまっておれば−− かっての仲間たちの多くが、現在では釈放され国会議員や大学教授になっているように(もちろん、死刑になった者もいるが)、 相当な社会的な地位についているとは思いますが、事件発覚時にたまたま外国にいたと言う運命のいたずらもあり、 今はパリでタクシーの運転手をしているのは、感慨が深いものがあります。
一つの救いは2人の子供の学業の成績がかなり良さそうなことであり、学校の宿題を見た時、 京畿高校の秀才であった著者の同年代のころと比べ、余りにも深い知識に驚いたそうである。 そこでは記憶中心の韓国の受験勉強ではなく、まさに「自由、平等、博愛」の勉強のようである。 子供たちが将来、韓国系フランス人として国際的な活躍をされることを祈る。

この本は韓国社会とフランス社会の二つの社会/文化の比較論として読んでも面白いですが、仕事柄、 日本など、他の国の人や社会についても知識が得られるのでしょうか、書いてあり、興味が持てました。 韓国を初め外国の社会/文化に興味がある人には読むことをお勧めします。


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