1997年8月31日号

日本での韓国関係の報道


日本に帰っておりますので、日本で報道されている韓国情報を拾ってみました。
数年前に比べると、確実に韓国への関心が高まってきているのを感じます。 韓国旅行も、ソウル・オリンピック前後のブームが去った後、他の国に興味が移ったのでしょうか、 下火になったと聞いていますが、最近は、汗蒸幕や買物などで、気軽に行ける外国として若い女性の間で人気が高まっているとのことです。 昨日も、日本の勤務先の知人が奥様、娘さん2人(大学生?)と一家4人でソウルに出発されました。 昔のようにキーセン観光のために男だけで行くことは少なくなり、女性だけのグループ、家族旅行として人気がでているようです。


日本の新聞や週刊誌を見ていますと、韓国関係のことが載っていない日が無いと言っても過言ではないでしょう。 私が帰ってきてからの10日間で、たまたま気が付いた記事を紹介します。

ソウル駐在の日本人の書いた本がソウルでバカ売れ
「週間文春」’97年9月4日号では次のような記事が紹介されています。

日本の総合商社「トーメン」の百瀬 格(ももせ ただし)ソウル支店長がハングルで書いた 【韓国が死んでも日本に追いつけない18の理由】(韓国・社会評論刊)がソウルでバカ売れしている。

百瀬氏は韓国駐在が通算28年と言う、日韓ビジネスの生き字引のような人であり、 ソウル駐在の日本各社の支社長で韓国語が出来るのは彼くらいしかいないとのこと。

この本は氏の半自叙伝の体裁を取っているが、随所に韓国批判をちりばめたのがミソ。 私(呉 光朝)はこの本を読んでいませんが、「週間文春」の記事から「18の理由」 のいくつかを引用します。

ゴミがあふれているソウル。 オリンピックのころは奇麗だったのに、最近は汚い。 韓国民のやる気の無さを指摘。

韓国大企業経営者は自分たちや株主の財産保全を考えるばかりで、従業員のことは何も考えていない。

賄賂社会(これを封筒社会と言うらしい)。 銀行の頭取から教師まで、みんな賄賂で生きている。 (呉 光朝:実際は「大統領から」と言いたかったのではないでしょうか。)

この本が売れている原因は、単純な「日本礼賛・韓国批判」ではなく、アメとムチを使い分けて、韓国民のプライドをくすぐっているとこなのだ。

百瀬氏は、この本に対して賛否両論の反響がくれば、返答というカタチで第2弾を出したいと思っている。 「しかし、いまのところ反対意見はないんですよ。」(百瀬氏) (以上、週間文春記事より)

韓国人亡命者が書いた本の日本語訳出版
同じ「週間文春」’97年9月4日号の中に「私の読書日記」というコーナーがあります。 4人の執筆者が持ち回りで書いているのですが、今回は、フランス文学者、鹿島 茂氏が書いています。

今回紹介された本のうち韓国に関係があるのは;
現在、パリでタクシー・ドライバーとして働く韓国人亡命者、洪 世和の手記 【コレアン・ドライバーは、パリで眠らない】(米津篤八訳、みすず書房 3000円+税)。 朴政権の軍事独裁の下で反体制運動に関係していた著者は、赴任中のパリで亡命を余儀なくされたばかりか、 パリの韓国人社会にも交わることのできない「異邦人の中の異邦人」となってしまう。 いったんは亡命者の特典を生かして大学の研究者になろうとするが、結局、生活苦からタクシー・ドライバーとして生きる途を選ぶ。 (週間文春記事より)

ここまでなら、単に本の紹介ですが、最後に鹿島 茂氏の韓国社会についての見方が書いてあり、 鋭い指摘であると思いましたので、以下に再掲します。 氏はフランス文学者とのことですが、 韓国についてもかなりの知識を持っているようです。

日本人といえば、もう一つ考えさせられるのが、著者に亡命を強いた韓国社会の非寛容は じつは旧日本帝国が韓国に残した負の遺産ではないかということだ。 とりわけ、拷問をする警察、古参兵が新兵をしごく軍隊、「アカ」を排除する共同体は戦前の日本そのもので、 われわれが解放されたその分を韓国民が負わされているのではないかという気になってくる。 亡命する必要のない日本人にとっても必読の一冊。


日本人の韓国観は、韓国ブームとはいえ、まだまだ「俗説」に流されている人がほとんどです。 しかしながら、今日の報告のようにもう一歩踏み込んで考える人が増えてきているのも事実でしょう。

同じことが韓国人にも言え、大多数の韓国人はマスコミに踊らされていると言っても過言ではないでしょう。 しかし、私がときどき、韓国人同僚、I氏、李 正馥氏の意見を紹介しているように、 日本について「俗説」に流されず、自分自身で理解を深めようとしている人も増えているのです。

これら新しい傾向は、10年後、20年後には、日韓の今より緊密な友好に貢献してくるものと期待しています。

いまや世界では「イスラエルとドイツが友好関係を深める」ところまで行っているのですから。


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