日本に帰っていた正月休みの間に、本箱に眠っていた本を読みました。 佐高信著「戦後を読む 50冊のフィクション(岩波新書 新赤本393)」と言う本です。 一度、読んだことがあるはずですが、全く記憶に残っていませんでした。 ところが読み直してみると、私の韓国経験が増えたせいでしょうか、いい本だと感じました。
まず題名ですが、ノンフィクションならともかく、フィクションといいながら「戦後を読む」と言ってますので、 少し矛盾しているなぁー、と思いました。 ところが、著者が「はじめに」のところで佐木隆三の「ノンフィクションではどうしても正義を背負った告発の調子が強くなる」 と、言う引用を書いておりましたので、「なるほど」と思いました。 確かにフィクションであってもその時代背景を反映していなければ、読者の共感も得られなく、 売れないでしょうね。
このホームページは「ソウル便り」ですので、この本の中からKoreanに関するところを抜粋して紹介します。 全部で50冊の本が紹介されているのですが、そのうち5冊がKoreanに関係しており、 日本社会の中にもKoreanの影響が大きいことを示しています。
なお、著者の生島治郎は実生活でもソウルから日本へ来てソープランドで働いていた女性と結婚して話題になりました。 このいきさつを描いた「片翼だけの天使(原作:生島治郎)」と言うビデオを見たことがあります。
「政治決着」については、昨年の大統領選挙直後に報道された日本政府高官の以下の発言が印象的でした。
「あの方も大人(タイジン?、オトナ?)でしょうから、当時の日本政府の態度(政治決着してしまい、その後の韓国政府に対する参考人引渡し要求を止めてしまったこと)を許して貰えると思う」
なお、著者の梁石日は評判になった映画「月はどっちにでている」の原作者です。
選ばれた50冊は佐高信と言うフリーライターが選んだものではありますが、 50冊の中には私が好きな松本清張が当然入っていると期待していましたら、ちゃんと入っていました。 Koreaとは関係ありませんが、好きな本なので追記します。
大人になり、私が始めてソウルにやってきた21年前、明洞を歩いていると20mごとに「ポン引き」 から声をかけられました(’97年5月12日号参照)。 その時「ゼロの焦点の世界だなぁー」と感じたものです。
佐高信と言う人を今まで知りませんでしたが、かなり確かな目を持っているように思いました。 著者略歴を見ると、地方の高校教師をした後、経済誌編集者をやっていたようです。 学者や政治家、小説家、一本槍の人達と違い、サラリーマン生活の経験者のようですね。 だから、私のようにサラリーマンが共感するような目を持っているのでしょう。