1997年9月25日号

韓国の義務教育


韓国の義務教育が1992年までは小学校だけだったと言うことをご存じない方がほとんどだと思います。 それ以後、農村では中学校まで拡大されましたが、現在でも小学校止まりのところは多いのです。

韓国の教育制度は戦後、日本と同じようにアメリカ式の6・3・3制になりましたが、 義務教育は最初の6年だけです。 日本では小学校と言っておりますが、韓国では何回か改名され、 現在では初等学校となっています。 なぜ、アメリカ式の制度になったにもかかわらず、義務教育が初等学校だけに据え置かれたのかは想像がつきますが、 ここでは詮索しないことにします。

インターネットサーフィンをしていましたら、進学率についての統計が出ておりましたので、 紹介します(出典はこちら)。

1969年1994年
小 > 中学校 進学率 61.8%98.8%

1971年1992年
中 > 高等学校 進学率69.4%95.6%

これを見ますと、現在ではほとんどの人が高校まで進学しており、実質的に義務教育化されておりますので、 いまさら制度を変更して税金を使うことも無いのが理解できます。 日本で高等学校を義務教育化しないのと同じ理由です(高校全入運動はあるようですが)。 また、現在では短大、大学の数も飛躍的に増加しており、進学熱と相まって日本と同様に、急速に高学歴社会になってきています。

上記の表を眺めていて問題と思われるのは1969年時点での小学校から中学校への進学率です。 この年の小学校卒業生は満12歳ですから1957年生まれです。 つまり、1997年の現在、 満40歳です。 私は韓国駐在員ですが、毎日、街で見かける人々のうち40歳以上の人の1/3以上は小学校卒の学歴しかないことに驚かされます。 私は学歴差別のためにこの文章を書いているわけではありません。

韓国では、最近は良くなりつつあるそうですが、学歴による給料の格差は大きいと聞いています。 ならば、1/3もの大きな勢力である彼らは、それほど恵まれていなかったと容易に想像できます。 国全体の力を発揮させるためには全ての国民がそれぞれのポジションで「やる気」を出して働き、 その総和が国力に反映されると信じています。 もちろん優れた指導者がいなければ国全体がどこに行くかわかりませんので、 指導者の養成も必要でしょうが、最後には一人一人の力の総和がものを言うでしょう。 そう言う意味で、国民の「やる気」を無くすような社会的な仕組みがあったすれば国家的な損失です。

9月23日号の「なぜだ韓国 なるほど韓国」でも述べられておりますように、 韓国人の「やる気の無さ」は各方面から指摘されています。 その原因は何らかの「不満がある」ことや「未来に希望が持てない」ことに起因しているのは想像にかたくありません。 不満をそらすために「反日政策(映画、歌の禁止)」や「日本タタキ」が利用されていないか心配です。 また、人間の弱いところに忍び寄ってくる、怪しげな宗教の影響も心配です。 もちろん、学歴が低い人々が全て「不満」を持っていたり、「未来に希望を持たない」と言うつもりはありませんが、 ここでは国全体のマクロの話をしております。


10年位前に、よく通った飲み屋のアガシが英語のアルファベットも読めなかったのには驚きました。 悪いことを聞いてしまったと後悔したのですが、彼女は小学校卒だったようです。

でもよく考えてみれば、世界には進学率どころか、文盲率が問題になっている国がまだあるのです。 私が行った、あるアフリカの国では文盲率低減が国家的課題となっていました。 その国ではフランス語が通用し(公用語はアラビア語)、 私は仕事の手伝いに来ている現地人にフランス語の単語を並べて仕事を依頼していたのです。 彼はフランス語を話していました。 あまりにも通じないので、「旅行会話帳」を取り出して文章を指さしたら、文字は読めないと身振りで示しました。 私はハッとしました。 コトバは喋れても文字は読めないのです。 文盲だったのです。 日本や韓国では想像もできないことです。 このような人たちに、キチッと教育を行い、「やる気」を出してもらえば、その国ももっと発展するのに、と思ったものです。 文字が読めなくても頭が悪いわけではないのです。


9月の目次に戻る みんなの落書き帳に進む