1997年9月9日号

ソウル秋葉原


読者からソウルの電気街についてレポートしてほしいとの要望が出されました。 「ソウル便り」のページは、日常に見聞きすることを報告する趣旨で書いておりますので、 電気街の報告は一部の人の興味でしかないと考え、詳細な報告をしておりませんでした。 ところが、インターネット・ユーザーは、かなり、韓国の電子機器・パソコンに興味を持っていることがわかりました。

パソコンに関しては、技術力、値段とも大きな期待をしない方がよろしい。 日本から見ておりますと、 韓国は台湾、シンガポール、マレーシアとイメージが重なっているいるため、 ソウルの秋葉原に買出しに来たら、安くて良いものが入手できると期待しがちですが、 失望することの方が多いでしょう。

ソウルの電気街は二か所あります。 今日は、以前の報告とダブることがあるかもしれませんが、それらについてまとめてみます。

清渓川(チョンゲチョン)
地下鉄1号線の鐘路3街(チョンノサンガ)または鐘路5街(チョンノオガ)駅で下車し、 両駅の中間あたりに「世運商街(セウンサンガ)」と言われるビルを中心とした電気街です。 このビルは3階建てですが、そこから約300メートルも南方面へ続く細長い雑居ビルです。 南の端は地下鉄2号線の乙支路4街(ウルチロサガ)付近まで続いています。 電気街は「世運商街」のビルだけでなく、周辺の地域一帯に小さな店が多数存在しています。 約10年前に、「都市再開発」で、後述の「龍山(ヨンサン)」に移転するはずだったそうですが、 計画どうり行かずに、残っている店が多いのです。

この電気街の呼び名は、最近の人は「世運商街」と呼んでいるようですが、 昔からのフリークは「清渓川」と呼んでいますので、私もそれに倣うことにします。 日本で「秋葉原」と言えば地名にもかかわらず「電気街」の代名詞になっているのと同じです。 ここに行ったなら、世運商街のビルだけでなく、周辺の自動車が入れないような路地の中も探索することを勧めます。 ジャンク屋など、特殊なものを扱う小さな店が多く、興味が尽きません。

なお、「清渓川」は現在は埋め立てられて、川自体は無くなっています。 戦前のソウルの写真集を見ると、川原でアジュマが韓国式の洗濯(棒で叩く)をしていたようです。

清渓川電気街の内容
上記のように、移転せずに残っているので、新しい製品(例えばパソコン)を扱う店は少なく、 昔ながらの製品やプロ向けの特殊なものを入手するところと言えます。 電気屋だけでなく、金属やプラスチックの素材及び加工屋、水道工事材料店、屋内電気照明工事材料店なども多いです。 金属銘板、プリント基板の特注屋も多いです。 白物家電も売っているのですが、 展示に力を入れてなく、段ボールに入れたまま、倉庫で直販している感じです。 間接費を省いて値段本位の商売をやっているのでしょう。
以下に目についた取扱い商品を列記します。

アーケードゲーム機の新品、中古品、部品(これに興味がある人にはこたえられないくらい、たくさんの店があります)。

業務用カラオケ機器、コンサートホール用PA機器(音だけでなく、ビデオマルチスクリーンなどを含む。)

衛星放送・ケーブルTV機器(直径1.6mのパラボラアンテナがごろごろしている)。

韓国のメーカーから設計変更で不要になり放出されたと思われる、電子部品(いわゆる新品ジャンク)。 但し、韓国メーカーの歴史が浅いためか、古い部品は少なく、日本で姿を消した古い物を探そうとしても困難です。

超高級オーディオ機器(5月20日号で報告したとうり)。

新品の電子部品(半導体など)を扱う店は少なく、これらは龍山に行った方が入手しやすいでしょう。

龍山(ヨンサン)
国鉄(KNR)京釜線でソウル駅から南へ2つ目の駅が龍山です。 首都圏では地下鉄1号線に乗り入れており、乗り換えなしで鐘路3街駅から移動できますので、 「清渓川電気街」と両方を見ることを勧めます。

電車を降りてから、すぐに改札を出ずに北の方に渡り廊下を100m位歩いたところに改札口があります。 改札口を出たところが、電気街のビルの3階です。 このビルだけでなく、付近にはあと3つほど電気製品を扱うビルがあります。 10年の歴史しかないため、全てが新しく奇麗な店ばかりです。
規模としては、東京の「秋葉原」、台北の「光華商場」、香港の「高登購物中心」、 シンガポールの「新林(シンリン)スクエアー」よりも大きく、アジア最大でしょう (私はその全てに行ったことがあります)。

龍山電気街の内容
白物家電、TV、ラジオ、ウオークマン、カメラなどのいわゆる家電製品の店も多いのですが、 なんといってもパソコンの販売店の店舗数では本場の秋葉原以上でしょう。 また、秋葉原では少なくなってしまったHAM機器の販売店は、駅ビルから道を挾んで、 右前方のビルには10軒くらい固まっています。 T−ZONEソウル支店もこの中にあります。
龍山電気街の全容はとても紹介できませんので、パソコン関係だけ以下にまとめます。

デスクトップPCのブランド品
ほとんどが韓国ブランド品で、コンパック、HPなどはほとんど見かけません。 三星、LG−IBM、大宇、セジンなど、国産ブランドのオンパレードです。 CRTディスプレイは韓国のお得意ですから、外国製はほとんど見かけません。 韓国製のPCの特長は電源入力が110Vでも220Vでも自動切り換えのものが多いことです。 間違えて220Vのコンセントに差し込んでも問題なく動作するものが多いです。 あと、PCのケース自体にステレオスピーカーを組み込んだモデルが多いことも日本と違いますね。

ノンブランド/ショップブランドPC
PCのメインボードはほとんど台湾製に席巻されており、この分野での韓国の地盤沈下を示しています。 韓国製のボードはマルチマディアカード、MODEMカードくらいでしょうか。 ケース、電源は韓国製が多いですが、コスト重視のためか電源入力は220Vオンリーのものがほとんどです。 韓国で買ったPCを日本に持って帰ったときは、電源だけ日本で買替える必要がありえます。 それがいやなら、上記のような自動切り換えの電源と指定して買うのがいいでしょう。

はっきり言って、韓国製のPC部品は高いですから、わざわざ韓国まで買出しに来る意味は全くありません。 第一、韓国製ボードが少ないのでは、話になりません。 韓国で買う意味のあるものは、ハングルキーボード、MODEM(韓国の電話回線との相性を考えると、 韓国製MODEMにしておくのが安全)くらいでしょう。

ノートブックPC
三星製が50%以上のシェアを占めています。 ところが、最近はLG−IBMのThinkPad(日本で売っているものとほぼ同じで、 ハングルキーボードになっている)が急追しているようです。 昨年は店頭では見かけなかったのですが、 今はどの店にも展示してあります。 ハングルキーボードはキーの数が英語キーボードと同じで、キートップにアルファベットに加えてハングルが表示してあるだけの違いのようです。

中古PC
数は少ないですが中古PCショップもあります。 ただし、日本の中古品の感覚ではとても高く、 得策ではないでしょう。

386DX、メモリ:8MB、HDD:160MB、14インチモニタ付で、 50万ウオン(7万円くらい)でした。 日本ですと、このクラスのマシンは価値がなく、 1万円でもなかなか売れないものです。


ソウルの電気街は規模が大きく、見学しているだけでも楽しいですが、購入する魅力はほとんどありませんね。 白物家電でも、最近はマレーシア製のPanasonic製品が人気で、数年前のように韓国製家電製品の元気が無いように思います。 韓国製品の競争力が落ちていなければいいのですが.....


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