第3弾 |
1:概要 |
前回はDC15VとDC19VのノートブックPC用ACアダプタを2階建にして34Vを作り、真空管ヘッドアンプからD級の終段まで全てをまかなう設計でした。34Vあれば終段のD級アンプは50W以上の大出力が得られる一方、真空管ヘッドアンプ用として低インピーダンスの球(ロシア製6N6)を起用しても、グリッドバイアス電圧が充分ではなく、大きな信号入力の時にグリッド電流が流れ始め、歪みが発生します。前回はグリッド電流の影響を避けるために入力トランスを使いました。 今回は、終段のD級アンプは「音が良い」と評判のトライパス社TA−2020チップを内蔵したLepai社製のLP-2020A+を使い、DC15Vを給電します。真空管ヘッドアンプは、6080の内部双三極ユニットを並列接続で設計してみました。プレート電流は14mA(双ユニット)、グリッドバイアス電圧は−4.4V位になるとのコンピューターシミュレーション結果が得られたので製作に取りかかりました。−4.4Vのバイアスならグリッド電流の影響から逃れ、高価な入力トランスを使わずに済みます。
|
2:回路 |
D級アンプとして評判が良いLepai社製のLP-2020A+ を使いました。このアンプの音質の良さについての書込はネットにあふれています。その一例として、以下をリンクしておきます。LP-2020A+の推奨電源電圧は12Vですが、今回はICの規格上限である15Vを供給し、パワーアップを図りました。 Tripath TA2020-020 という伝説http://abukuma.us/takuki/12/080.html 真空管アンプ部の回路は、前回の好結果を基に大きな変更を避け、真空管を6N6から6080に変更して入力トランスを省略する程度にとどめました。また、6080はμが低く、1.6倍くらいしか増幅しないので、この段での飽和の発生がなく、入力ボリュームを省略できるメリットもありました。 今回の回路図(真空管部と電源部)は ここ をクリックして参照ください。 電源にスイッチング電源(ノートPC用ACアダプタ)を2個用い、D級アンプもスイッチング動作ですから、それぞれの発振周波数の違いがビートになってスピーカーから出てくるおそれがあります。電源回路のケミコンの容量の大容量化とDC34Vラインには10mHおよび100Ωの抵抗を入れフィルタを構成しました。 |
3:部品 |
プレート負荷抵抗として音質が良いと評判のデール社の1KΩ巻線抵抗を使いました(前回と同じ)。 結合コンデンサーも前回と同じく、北京製の4μF/160V耐圧オイルコンデンサーを採用しました。これだけ大きな容量のオイルコンデンサーは、今では中国のジャンク屋でしか入手できなくなってきています。 カソードのバイパスコンデンサーは、3,300μFの高誘電率電解液を用いたものを使いました。今は亡きSANYO電気から技術転移した会社が製造しているものです。 6080はとりあえずPhilips社製を差してあります。20本くらいの各社製の手持ちがありますので、差し替えてメーカーによる音質の違いを比較してみるつもりです。 *ACアダプタ: *シャーシー: *ヒーター電圧ドロップ用シリコンダイオード:
|
4:測定 |
D級アンプ側のボーリュームを変化させてもTHDかわらず(つまり一定の歪みが常に付加される ⇒ 狙いどおりのサウンドプロセッサー動作をしていることが確かめられた) 最大出力: 8W 6080ヒーター電圧ドロップ用ダイオードブリッジの温度を測定してみました。 |
5:試聴 |
とりあえず、ピンクフロイドの「狂気」を聴いてみました。冒頭の心臓音(低音)がきれいに再生されました。D級アンプが低音再生を得意としていることを示す良い音源だと思います。 わずか1.5倍の増幅のために6080を持ち出すのは大げさすぎるとも思いましたが、この球はオークションなどでも安価に出品されていますのでお買い得です。ヒーター電流が大きく(2.5A)、ヒーターの電源供給回路に工夫を要しますが、音質的には優れていると思います。 |