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 真空管+MOS FETハイブリッドアンプ

設計目標:

無帰還シングルアンプの音の良さは半導体にも当てはまるようで、ネットでもかなりの実験例を見つけることができます。私もやってみたくなり、参考にする回路を探しまくり、以下を見つけました。

http://www.geocities.com/ResearchTriangle/4055/SEMOS.JPG

質問があったので作者にメールを送りましたが応答が無く、私自身で原回路を変更してみました。大きな変更点は以下です。

*ドライバ管をジーメンスのHi−gm管である、D3aの三極管接続に変更した

*バイアスの定電流発生回路のFETゲート回路に47uFのコンデンサーを入れて、電源投入時のポップアップ音の低減を図った

*電源投入数秒後にリレーによって大容量のコンデンサーを正負電源に並列に挿入するようにした(遅延させないと電源の突入電流保護回路が働いてしまう)

 

回路説明:

回路図は以下をクリックしてください。

 アンプ部の回路図

 電源部の回路図

D3aの負荷抵抗は、4.7KΩと低くとり、次段の大きな入力容量による高域特性の劣化を防いだ。負荷抵抗が小さいとゲインが取れないので、それを補うためにHi-gmのD3aを起用し、プレート電流は10mAに設定した。この球は、日本やアメリカのショップでは売っていないようで、Peteがドイツ出張の折に購入したモノを譲って貰った。代用管として、12GN7や6EJ7などのHi−gm五極管の三極管接続が使用できると思う。あるいは原回路のように双三極管を使い、F特とアンプゲインのバランスがとれるよう負荷抵抗を設計すれば良い。カソードのパスコンには湿式タンタルコンデンサーを使用し、容量は100μFと小さめに押さえ、不要な超低域をカットした。

上側のFETはソースフォロワーとして働き、ゲインはほぼ1である。つまりこのアンプの入力から出力までの電圧ゲインは、D3aが一人で稼ぎ出していることになる。ソースフォロワーの出力インピーダンスは、ほぼ、1/gmなので、今回のFETのgm=24Sを代入すると、きわめて低い出力インピーダンスとなるが、ソースに直列に入っている0.47Ωにより、アンプとしてのダンピングファクターは、10.5に留まった(実測値)。下側のFETは、定電流回路を構成している。FETを使わずにトランジスタを使っても構成可能であるが、トランジスタは温度係数がプラスなので、熱暴走が心配である。バイアス電流は、1.5Aに設定した。これで8W強の出力が得られる。スピーカー端子への直流出力を防止するためにオペアンプによるサーボ回路を使っている。オフセット調整ボリュームは省略した。

終段は、パワーMOS FETが各種売られていて、耐圧:50V以上、電流5A以上なら使用可能であるが、かなりの発熱があり、放熱器との熱接触を良くしてやらないと熱破壊を起こしてしまう。最初は外国製の小型のFETを使っていたが、6個も壊してしまい、TO−3P形のFETに交換したら壊れなくなった。注意するのはFETとヒートシンクの間に挟む放熱シート自体の熱抵抗が意外と大きく、できたら使いたくない所であるが、そうすると、放熱器は各FETに一個ずつ必要でしかも電気的に絶縁しなければならず工作が大変である。今回使った放熱シートは、信越シリコーンのTC30AG1/8の0.3mm厚であるが、できたらもっと高性能なものを使いたい。放熱器は、Core Two Duo (LLC775)用のヒートパイプ付きを、FET 2個につき、1個の放熱器でまかなった。

冷却FANは定格12Vのところ6Vで動作させている。

DC+/−16Vの電源として、IBM ThinkPad用のACアダプタを2個使用した。真空管の電源は手持ちのジャンクのトランスを活用した。D3aのヒーターはAC点火であるので、ハムを避けるため、6.3Vの一端を−16Vに接続するとともに、他端との間に3.3μFのフィルムコンを挿入した。

 調整中の本器

部品の説明

シャーシーは古いTVチューナーのケースを加工して再利用した。電源部は下部シャーシーに、アンプ部はトップカバーに組込み両者を電線で結んだ。電源トランスの背が高く内部に入りきらないので、トップカバーをくりぬいて上まで飛び出させた。放熱器は、トップカバーの上に乗せた2mm厚のアルミ板の上に設置した。

信号が通る抵抗器はカーボン抵抗を、カップリングコンデンサーとサーボ回路の積分コンデンサーはWIMA社のポリプロピレンコンデンサー、630V、0.47μFを使った。

測定結果

 出力: 8W強でクリップが始まる。クリップ直前のFFTによる測定結果

 ダンピングファクター: 10.5@1KHz、1W (On/Off法)

 アンプゲイン: 31.5dB、入力端子から8Ω終端まで

 周波数特性(R・LでほとんどかわらないのでRのみ表示) WaveSpectraによる測定です

 歪特性 WaveSpectraによる測定です

音質評価とまとめ

いやな音が全くしない自然な感じの音で歪みも全く感じられず、きわめてクリアーかつ広帯域な音である。それでいて音が良く前に出て、雰囲気をよく再現している。JAZZもクラシックもどちらも上手にこなすアンプである。

今回のアンプの部品代は1.5万円くらいでしょうか。真空管アンプに比べればずいぶん安く音の良いアンプが製作できるモノです。

電子工作仲間のNさんも同じ回路で製作し(真空管とFETの型番は違いますが)、好結果が得られたとのことでした。

 Nさんのアンプの写真

 


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