2001年12月13日号
ベトナム関係の本の紹介


 ベトナム旅行の前に予習しておけば良かったのですが、ものぐさで、やっていなく、帰ってきてから近くの図書館で3冊の本を借りて読みました。 どの本も、いわゆる観光ガイドブックではありませんが、ベトナムに魅せられて長年にわたって研究を続けている著者達です。 他の国について書かれた本の多くは売文のためか、ほんの1年くらいの調査に基づき書かれたものが多い中で、長年の調査研究に根ざしたものは説得力が違います。 また、ベトナムウォッチャーでありながら、妙な思い入れもなく、淡々と、ベトナムの良い点、悪い点を書いている姿勢も、他の国のウォッチャーとはひと味違うものが感じられます。 日本人が韓国について書いた書物には、このような姿勢のものが少ないのとは好対照です。

 

中野亜里 著、ベトナム 「工業化・近代化」と人々の暮らし

三修社、1998年6月18日第1版発行。 ISBN4-384-01079-6 C0039

著者:1960年滋賀県生まれ。 早稲田大学教育研究所ベトナム語科・慶応義塾大学外国語校ベトナム語科各講師。 城西国際大学人文学部・國學院大學法学部各講師。

著者のあとがきより(書き出し部分のみ):

 本書の基本となっているのは、今のベトナムが「貧しさ」と「豊かさ」とか、「発展」とかの意味を取り違えているのではないか、「工業化・近代化」が果たして「豊かさ」への特効薬になるのか、という問題意識である。

 

古田元夫 著、ベトナムの現在

講談社現代新書 1334、1996年12月20日第1刷発行。 ISBN4-06-149334-5 C0125 P660E (0)

著者:1949年東京生まれ。 現在、東京大学大学院総合文化研究科教授。

表紙に書かれたうたい文句:

高度成長を続ける注目国家の実像とは。 市場経済化を実現したドイモイ(刷新)の本質を、民族の歴史、共産党体制の変遷から、第1人者が解き明かす。

伊藤千尋 著、観光コースでない ベトナム 歴史・戦争・民族を知る旅

高文研、1995年11月10日第1刷発行。 ISBN4-87498-167-4 C0036

著者:1949年山口県生まれ。 現在、朝日新聞記者

”はじめに”の書き出し分の引用:

 ベトナムは日本によく似ている。 南北に細長い地形、背骨のように国土を貫く山脈、わずかな平野に多くの人口が密集し、水田を耕した生活。 中国の影響を受けながら独自に築いた言葉と文化、箸で食事する習慣、仏教と儒教に基づく価値観、神棚に祖先をまつる土着の宗教。 中国(元)の侵略を退け、南への勢力を広げ、鎖国をした歴史。 もちろん黄色人種として肌の色も同じだ。 こうしてみると何から何までそっくりである。



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