1999年7月31日号
本の紹介、2冊 金大中著 竹国友康著

暑くて外出する気にもなりません。 エアコンを効かした部屋で最近読んだ韓国関係の本2冊の紹介を書きました。
 
金大中 著「いくたびか死線を越えて [我が人生、我が道]」
本人により昨年の大統領就任前後に書かれたもので、全羅道の小さな島である「荷衣島」で生まれた子供時代から、大統領になるまでを描いている。 

これだけ波瀾万丈の人は世界でもそんなにはいないと思われる多彩な人生を歩んできた。 日本でも「拉致事件」以後のことは良く知られているが、それ以前のことはあまり知られていなかったので大いに参考になる。

大統領というと「いかめしい」感じを受けるが、私人としては意外と「茶目っ気」がある人のように思われた。 深い信仰と、困難な状況でも決して希望を捨てない、−ある意味では「楽観的」な−、メンタリティーを持っていたので、ここまで生きのびてこれたのであろう。 この「強運」を現在困難な状況にある韓国全体のために分け与えるよう願う。

生涯のライバルであった朴正熙大統領とは、ついに一回も話し合いの機会が得られなかったようである。

竹国友康 著「ある日韓歴史の旅 [鎮海の桜]」
朝日選書622
現在、韓国で桜の名所と言われるものは何ヶ所かある。 その中でも最も規模が大きく、花見の名所として知られるのが釜山の近くの鎮海である。 ここは、入り組んだ海岸線に沿った天然の良港であり、李王朝時代から港があったが、日韓併合の前後から帝国海軍の軍港として開発が強化されてきた街として知られている。 日露戦争のときの有名な「日本海海戦」で、日本の連合艦隊が出撃したのもここからである。 (日本海海戦は日韓併合以前であるが、すでに日本は我がもの顔に韓国の港を使っていた証拠の一つである)   戦後も引き続き韓国海軍の軍港として使用されている。 

当地に最初に桜が植えられたのは、日本が統治していた時代であるが、戦後、一旦、「日本文化を廃す」として伐採されたが、「桜に罪はない」、 「ソメイヨシノの原産地は日本ではなく済州島」である、などの理由で再び植樹されたとのことである。 植樹にあたっては日本人、在日韓国人から大量の苗木が送られたとのことである。

筆者は専門の文筆業でなく国語の教師であり、個人的な興味で調査をすすめたようであるが、何回も渡航し、詳しく調査、聞き取りをしている。 このような「桜という日本的なものが韓国にある」というテーマだと、どうしても日本側、韓国側の資料や聞取りをした人の「国粋的」なバイアスがかかりがちであるが、筆者は日韓どちにも思い入れをせず「事実」を書きとめようとしている態度には好感が持てる。 上記、「ソメイヨシノの原産地は済州島」も科学的に間違いであることも報告している。



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