2000年5月13日号
「ソウルの日本大使館から」
町田 貢著
文藝春秋i社、1999年3月10日発行
近所に図書館がオープンしましたので本を借りてきました。 例によって韓国関係のものを物色したのですが、新装オープンのため新刊書が多く、なかなか快適です。
筆者は、当時、日本で唯一朝鮮学科があった天理大学に1954年に入学した。 新入生は10名で、うち日本人は7名であった、現在の韓国語ブームからは隔世の感がある時代に韓国語を習った人であり、戦後の日韓関係の生き字引ともいえる人です。
1958年、卒業と同時に外務省に就職し、1998年に退官するまでに通算25年間韓国で勤務した。 キャリアが長いことに加えて、外交官という立場上、普通のサラリーマン以上の情報を入手することができ、他の著作では見られない、表話や裏話が書かれており、過去40年間の韓国社会の変遷を知ることができる貴重な一冊である。
以下に目次を示します。
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目次からうかがい知ることができるかと思いますが、実際の経験に基づいて書かれており、書物の受け売りやステレオタイプに流れることなく貴重な実録であると思いました。 以下に「あとがき」からの引用を示し、筆者の思いを伝えます。
精いっぱい書こうとしたが、どうしても20パーセント位は書けないことがあった。 それでも、タブーと言われているキーセンの話や、日本人のセックスアニマルぶりについても思いきって触れてみた。
ここに記されていることは、私自身が日常生活のなかで経験したことをそのまま綴ったものであり、いうなれば私の韓国日記ともいえるものである。
みなさんがあまり知らない30年、40年前のことについても触れているので、当時の日本と韓国との関係はどのようなものであったかを、少しでもお伝えすることができれば、この書を著した目的を達したことになり、これほど嬉しいことはない。
私(呉 光朝)も60年代から韓国については興味を持ち、初めての訪韓以来20年以上経過しますが、さすがにこの筆者の実体験には足もとには及ぶことができません。
「あとがき」にもありますように、キーセン観光にからみ、日本の某一流電気メーカーの社長が社用でソウル出張中にホテルの部屋で心臓麻痺で亡くなったことは当時大きく報道されました。 大きく報道された割にはよくわからない事件でした。 この本によると、腹上死だったとのことです。 そこまでは書いてありませんが、一流企業の社長ですし、韓国語ができないでしょうから、街の中でナンパしたアガシではなく、取引先が接待で差し向けたアガシであったと推定します。 韓国は賄賂社会といわれますが、お金だけでなく、アガシもよく使われるようです(現在でも?)。