1997年11月21日号
フグ料理とビール

韓国人の友達同志は人間関係が濃厚であると、再三、書いております。 今週もそんなことがありました。 元同僚の韓国人が転勤になっていてしばらく会っていませんでした。 ソウルまで出て来る用事があるので、仕事後、一緒に食事をしないかとのお誘いです。 もちろん、私は韓国では自らを「NR(Never Refuse)」と言って、食事/飲酒の誘いは絶対に断らないと、宣言してますので、即、OKの返事をしました。

私は日頃、折角、韓国にいるのだからと、できるだけ日本食を食べないようにしているのですが、 彼が日本食を食べたいと言うので、中間を取って、「フグ料理」にしました。 フグ料理は日帝時代に日本が残した風習か、もともと韓国にあったのかは知りませんが、 関連するコトバには日本語がかなり混ざっています。


注文したのは「ボッk・ブルコギ」と「ボッk・ス・ヨk」です。 1人前15000ウォンですから、カルビの焼き肉と同じくらいで、日本でフグを食べるよりは安いです。
「ボk」と言うのは「フグ」の漢字である「鰒」の韓国式読み方です。 この漢字からすると、日本でも「フク」と発音しても良さそうですね。 事実、九州地方では「フク」と言っているところもあるそうです。

「ブルコギ」は焼き肉として有名ですが。 コトバの意味は「ブル」が「火」、 「コギ」が「肉」の意味ですから、「焼き肉」の意味で、「ブルコギ」とだけ言えば、 普通は牛肉の焼き肉を表します。 「ボk・ブルコギ」は最初に「フグ」が付いていますから、 「フグの焼き肉」と言うことになります。 石をくりぬいて作った浅めのフライパンを使い、テーブルの上で焼きながら食べます。 一緒に焼く野菜は、日本には無い「ミナリ」と言うものでした。 外見は「ニンニクの茎」に似ているのですが、味が違っていました。

「ボk・ス・ヨk」は元は全て漢字のはずですから理解が早いです。 「鰒水肉」となります。 つまりフグの水炊きです。
あと、「ボk・チリ」もメニューに書いてありました。 「フグチリ」のことです。 でも「テッチリ」と言う表現は無かったですね。

サイド・ディシュとして出された小皿に「紅魚(ホンオ)」の刺身があり、美味しかったです。 文字どうり、赤い色をした魚(身は白身)で、1mくらいにもなる大型魚だそうですが、日本名がわかりませんでしたし、 また、「B級グルメ」を僣称する呉 光朝、でもこのようなサシミは食べたことがありませんでした。 なお、この魚は日本の「クサヤ」のように発酵させて食べると美味しいそうで、全羅道の名物だそうです。 但し、「クサヤ」のように内臓を入れないので、あのような強烈な臭いは無いそうです。


お酒はビールと「ヒレ酒」を飲みました。
ビールは現在、韓国でトップシェア(50%以上)を誇る「HITE」です。 以前から何回も書いているように、私が最初に韓国に来たのは21年前です。 その時には「HITE」と言うブランドが無かったのに、今ではトップシェアです。 そのことを同僚に聞いてみましたら、以下のように答えました。

確かに20年くらい前は「OB」と「クラウン」の2社しかなく、「OB」のシェアは75%にもなっていた。 「クラウン」は会社名を「朝鮮麦酒」と言い、シェアが低迷していたが、ある時から経営方針を転換し、 宣伝に力を入れると共にCIを実施し、ブランド名を「HITE」に変えた。

宣伝では「地下100mから汲み上げた、美味しい水を使って作っている」と大キャンペーンを行った結果、 現在では50%以上のシェアになった。 その結果、OBの経営陣は財閥の親会社から更迭されるし、大変だったようだ、

その後、焼酎で有名な「真露」もビールに進出し、「CASS」ブランドを使っている。 ところが、HITEの成功が宣伝の力によることが大きいのを各社とも知っており、 各社の宣伝/プロモーションに費やす費用は莫大であり、各社とも低収益である。 「真露」に至っては、焼酎が好調にもかかわらず、ビール部門などの新規分野が足をひっぱり、 ついに倒産してしまった。


ヒレ酒は韓国では「ヒレ・チョンジュ(清酒)」と注文すればよく、日本語のヒレがそのまま通用します。 この店ではフグの「しっぽ(尾ヒレ)」を使っていました。


いやーー。 本当に韓国人の友達付き合いは濃厚なのが良く判ります。 今は少なくなりましたが、男同志でも手をつないで歩いているのが理解できます。


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