1997年11月2日号

林森北路(台湾、その2)


前号では「台湾概要」で硬い話になりましたので、柔らかい話から始めましょう。
台北に出張した日本人でここに行かなかった人は、まず、いないでしょう。 主として日本人相手の飲屋街です。 但し、飲屋街と言う性格上、パック旅行にはまず入っていません。

林森北路の場所
台北の街は、きれいに碁盤の目になっていますので判りやすいですが、 南北に縦断しているメインストリートである中山路と平行して一本東側を走っています。 台北の大きな街路は同じ道でも総統府あたりを境にして、「東西南北」のどれかが付きます。 従って、「林森《北》路」は「林森路」のうちの総統府より北の部分を表わします。

タクシーに乗る場合でも筆談が通じますので、全く言葉が喋れなくても不自由しません。 メモ用紙に書いた地名を運転手に示せば連れて行ってくれます。 合乗りもボリもありませんので、韓国のように警戒する必要はありません。 台湾ではメモ用紙とペンは外出時の必需品です。

林森北路を横切る何本かの小道があり、南から1条通と数え、10条通まであります。 1条通から10条通まで歩いても大したことがありませんので、 タクシーを降りるときは中心の6条通辺りで降りると便利です。 すなわち、メモには「林森北路 六条通」と書いて運転手に見せればOKです。

林森北路飲屋街の内容
正確には知りませんが、300軒以上の飲屋が密集しているのではないでしょうか。 その全ての店で日本語が通用します。 通用すると言うのは、店に一人だけ日本語を喋れる人がいると言うことではなく、横に座ってくれるアガシが全て喋るのです。 このような街は韓国には無く、さすが中国人だけあって商売が上手で「お客様のニーズに合わせた」経営です。 日本人と見たらボルことばかり考えている韓国の日本人相手の店とは違います。

私はこの街で、多分、30軒以上の店に入ったことがありますが、どの店も値段がほとんど同じで、 ボラレることを心配する必要がありません。 内部は韓国のルームサロンのように個室では無く、日本のスナックのような店や、 大きい所ではボックス席が主体です。 カラオケは全ての店に置いてあり、日本語、中国語のどちらの歌も可能です。
料金は大体以下の通りです。
ウイスキーボトル(国産ウイスキーは無く、本場のスコッチ又はバーボン)が5千元(約4倍すると日本円)。 しかもボトルキープ制があります。

テーブルチャージ(おつまみ付)が1000元。

これだけで何時間粘っても、何曲カラオケを歌っても関係無しです。

店に入ったら「アガシ」ではなく「小姐(シャォチェ)」と言いましょう。 韓国で「アガシ」を使うときと同じような場面で使えます(飲屋以外でも)。 小姐は特定の客への専属ではなく、次々とローテーションしますのでチップは必要ありません。 ボトルはチビチビ飲めば3日間位は保ちますので、毎日のように来てもそれほどの負担にはならないでしょう。 まあ、そうは言っても、私なんかは、次々と席に来る小姐から「呉さん、きょうは機嫌が良さそうね」 とか何とか言われて、鼻の下を伸ばすので、「飲め飲め」と言って、結局、1日でボトルが無くなることが多いですが.... それでも、ソウルのルームサロンや寡婦村よりは安いですから楽しめます。

閉店後
「閉店後にホテルまでつき合ってくれる小姐はいるのか?」と、言う質問が出そうですが、 答えは「YESでありNO」です。 店によって経営方針があり、禁止しているところと、奨励しているところがあるのです。 韓国のルームサロンのように同じ店であっても服の色でYESとNOのアガシを区別しているのではなく、 店単位で違うと言うのも両国のサブカルチャーの比較論として面白いのではないでしょうか。 店の識別は外部からはなかなか判りませんので、知っている人に聞くのが確実ですが、 どうしても一人で探検したい人のために秘訣をコッソリ教えます。
「ピアノ・バー」または「ピアノ・クラブ」と書いてあり、店の中に本当にピアノが置いてあるところがYESの店です。
まあ、YESの店に行っても飲代は同じですので、興味の無い人には関係無く楽しめます。 ところが、純粋に飲むことやカラオケを楽しみたい人がこのような店に入ると、おちおち楽しんでいられません。 ものの10分もしないうちに、「店を早退して、一緒に出たい」と、次々にローテーションして席に付く小姐が言うのです。 小姐を早退させるときは罰金として1000元を店に払わなければなりません。 この辺りもビジネスライクにドライに割り切っています。

なお、NOの店(禁止の店)であっても、そこは男と女ですから何が起こるか判りませんよ。 自信のある方はトライして見て下さい。
ある知っている人ですが、NOのはずの始めての店で、閉店後、小姐がホテルの部屋まで押しかけてきたそうです。 いわゆる「一目惚れ」です。 ところが実際は二人とも酩酊状態で、何もなくツインのベッドに別々に朝まで寝てたそうです。 商売抜きで「惚れっぽい」と、言うのも台湾小姐の特長の一つではないでしょうか。 こう言う話は韓国では聞いたことがないですね。

こぼれ話
日本で仕事上関係がある会社の人から聞いたのですが、その会社の台湾駐在員は5年間、台北にいましたが、 林森北路の飲屋街で5年間に1000万円使ったそうです。 そのくらい面白い街なのでしょう。


飲屋にも韓国と台湾では違いがあり面白いですね。 それらの違いが両国のビジネスと言うものに対する姿勢の違い、国民性の違いとして捉えられるような気がします。

ソウル、台北の飲屋事情ばかり書いてますので、私がどんな仕事をしているかと疑問を持たれる読者もいると思いますが、 実際は真面目なサラーリーマン技術者ですので誤解のないように。 先日、お会いした本間加奈様、蝦 春巻様はご承知だと思います。


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