1997年7月18日号

KIAグループ倒産の危機


7月16日付けの朝鮮日報によると、 自動車業界第2位の「起亜自動車」とそのグループが不渡り状態になり、 事態の重大さから当局が銀行界に働きかけて、とりあえず手形期限の延長の特別処理で倒産を免れたようです。 このニュースは日本のasahi.comでも異例の解説付きで報道されました。 負債総額は9兆4千億ウオンと、年初に倒産した「韓宝グループ」の負債総額(約7兆ウオン)を上回り、 史上最大です。 また、韓国焼酎で日本でも有名な「真露」もすでに倒産し、 銀行団を中心とした管理グループの下で生産は続けられているようです(おかげで、昨日も飲めました)。 あれだけ良く売れている「真露」が倒産したのですから、よほどの経営ミスがあったことでしょう。
こんなにデカイ会社がバタバタ倒産するのですから、政府が外国からの投資を制限しなくても、 恐がって誰も投資しなくなりますよね。


ご承知のように韓国の産業界は「財閥」を中心として発達してきました。 これは戦前の日本の財閥を手本としながらも、同族経営、他の財閥との取引きが少ない、など、前近代的な姿を色濃く残しているものです。

また、たびたび書いていますように、人件費の高騰、労働生産性の低さ(日本の1/3から1/2)に起因する高コスト、 世界の先進技術を得るために、自主技術の育成よりも手っとり早い、外国から「技術を買ってくる」風潮、 右上がりの経済成長グラフを想定した多額の投資−−それは高金利の借金をすることにつながる(韓国の高金利はすでに報告済)−−、 高い関税に守られて、コスト低減意欲の欠如、「ケンチャナヨ」精神による品質向上意欲の欠如、 など、いくらでも韓国産業の問題点を上げることができます。

今回の手形期限の延長は抜本的な解決ではありませんので、自動車業界の再編成に向けて大きく動き出すことでしょう。 韓国の乗用車メーカーはすでに3社有り(RV車、スポーツカー専用メーカーを除く)、 来年には「三星グループ」が日産自動車と技術提携して発売開始予定で、すでに宣伝活動を始めています。 残る大財閥で自動車会社を持たないのはLGグループ(ラッキッキー・ゴールドスターからCIで改名した)ですが、 実は昨年に、LGの首脳が「自動車会社を持ちたい」と公表していたのです。 ところが今回の事態に対してコメントを求められると、「KIAを買収するつもりはない」 と言っています。 まあ、買収を有利にすすめるための煙幕かもしれませんので、額面どうりには受け取れないでしょう。
しかしながら、人口が4500万人の国に乗用車メーカーが4社は多すぎます。 あのアメリカですら3社しかないのですからね。 そして、第3番目のクライスラー社ですら一時は倒産の危機に瀕したくらい、寡占化され易い市場なのです。


最後にKIAの名誉のために、けっして悪い車を作っていたのではないことを述べます。 2リッタークラスの最高グレードの「CREDOS 2.0 EXCESS」の仕様を以下に添付しますが、 日本のマツダと提携した、それなりにまとまった良い車です。

項 目 仕 様 
車体形式4ドア・セダン
車体寸法 L x W x H (mm) 4710 x 1780 x 1400
ホイルベース (mm)2665
重量 (kg)1270
排気量 (cc)1998
最大出力 (ps/rpm)148/6000
最大トルク (kgm/rpm)19.4/4000
気化器MULTI−EFI
変速機4段AT
懸架方式(前)マクファーソン・ストラット
懸架方式(後)デュアルリンク
ブレ−キ V・Disk/前、Disk/後
タイア195/65R 14
車両価格1590万ウオン

日本の「5ナンバー」の横幅制限である1700mmよりも幅広のため、外観はそれなりにまとまっています。


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