1997年6月22日号

中華料理


昨日の夕食は近くの中華料理でした。 料理人は中国人のおじさんです。 メニューはハングル、漢字、英語の3種類で書いてあります。 ここ、地下鉄江南駅の近くには外国語の学院や海外留学の手続/斡旋を行なう会社が集まっており、 外国人も多いのです。


以前にも報告しましたが、韓国は外国人に対して厳しい制限を設けており、 世界中で活躍している華僑も韓国だけは成功が難しい国のようです。
北朝鮮と対峙している現状では難しいのかも知れませんが、 外国人の入国を緩めないと、これだけ給料が上がってしまった現状では、 製品コストの上昇で国際的な競争力を失うのではないでしょうか。
国民一人当りのGNPでは韓国の上を行く台湾ではすでに東南アジアの労働者を入れ始めており、 韓国が 「日本に追いつけ、追い越せ」と言っている間に、足元をしっかり固めてきたようです。


韓国の中華料理での人気の筆頭は「ジャジャン麺/飯」です。 店に入ると半数以上のお客がこれを食べています。 ジャジャンは漢字で「炒醤」と書くのではないかと思いますが(韓国人に聞いても知らない)、 ようするに、「回鍋肉(ホイコーロー)」に使う、中国味噌とオイスター・ソースを混ぜたタレを炒めたものです。 ところが、韓国のジャジャンは不思議な味がするのです。 どうも砂糖を入れているようで、 不自然な甘みがあって、しかもオイスター・ソースの味にコクがありません。
私はいつもジャジャンは敬遠して、注文するのは「エビ・チャーハン」と「青島ビール」です。 中国料理には「フカヒレ・スープ」とか「燕の巣のスープ」など高価なものも多いですが、 これらは「珍味」であって、ごくたまに少しだけ食べるのがよく、 「うまい、うまい」と言ってバカスカ食べるものではないでしょう。 チャーハンを上手に作る人こそ腕の立つ料理人だと思います。 「料理の鉄人」でも、高価な料理に混じって、さりげなくチャーハンを添える「鉄人」もいますね。

今日、行った店は料理人がお父さん、会計がお母さん、ウェートレスが娘の一家で営業しているようでした。 勘定を払うときに、中華民国(台湾)政府発行の料理人の免許書が貼ってあるのを発見しました。 そこで、私のつたないKorea語とほんのわずかしか知らない北京語の単語を使って、おばさんに話しかけてみました。 以下、おばさんの話です。

私は日帝時代に中国の山東半島で生まれた。 戦後、台湾の台北県中和市に移り住んだ。 20年前に韓国に移住してきた。
私が免許状に描かれている写真を指さして「孫文」と言ったら、「対(トエ、YESの意味)、国父」と、答えました。

このおばさんが人生を送ってきた土地は、まさに日本帝国主義が猛威を振るったところばかりなのです。 そして、最後の安住の地もそれほど中国人を暖かく迎えてくれる土地ではないようです。 でもソウルの一等地にそこそこの中華料理店を持ったのですから、結果はよかったのでしょう。

私が日本人であることを知りながら、Korea語で「日帝時代」と言ったときに、 あばさんの表情が少し変ったように見えたのは気のせいでしょうか。 それにしても、中国語でもなく、日本語でもなく、会話をしている両者のどちらの母国語でもないコトバで、 「日帝時代」のような微妙な単語が意志疎通するのですから、不思議な感じを受けました。


45年ぶりに日本語を話したオジサンや、今日のオバサンなど、 日本にいてはとても会うことができない人に会うことができました。 世界は本当に広いものですね。


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