1997年6月16日号

韓国の産業


会社の同僚(韓国人)と、韓国の産業・経済について話したり、 自分で見聞したことをまとめてみました。 以下に出てくる数字や情報は正規のものを見たわけではありませんので、正確さを欠きます。 雰囲気的にとらえて下さい。 また、正確な情報をご存じの方はお知らせいただけると、さいわです。

以下に、同僚の意見を掲載しますが、彼はソウル大学、大学院卒業で、年齢は40歳くらいです。 「反日」でも「親日」でもありませんが、日本に対する知識は豊富で、 日本の「繁栄の秘密」を研究し、良い点は韓国にも取り入れて行こうと努力している人です。 日帝時代の教育を受けてなく、戦後の韓国で生まれ育ち、現在、 韓国社会の中心として働いているインテリ層の話として興味があります。

韓国の同僚の言葉
国民一人あたりのGNPは、日本:3万ドル、韓国:1万ドルである。 つまり3倍である。 それにたいして、給料は、日本と韓国で1.5倍の比率である。 つまり、{3倍÷1.5倍}=2になり、韓国人から見れば、日本人の給料は安すぎて、 現在の2倍くらいの給料を貰ってもいいのではないか。

これを見た皆さんはどう思われますか。 給料を上げて貰えたら、うれしいのですが、 日本中の会社や公務員の給料を2倍にしたら、倒産を免れる会社はどれだけあるでしょうか。 生き残るのはトヨタ自動車くらいでしょうか。 それでも過去の蓄積があるからで、 蓄積を使い果せば、トヨタといえども危ないでしょう。 すでに、一般の会社なら倒産していると言われる国家会計だって壊滅状態でしょう。

私が言いたいのは、日本人の給料が安すぎるのではなくて、「韓国の給料が高すぎる」か、 または、「給料に対して生産性が低い」と言うことです。 これだけ物価が高い韓国ですから、「韓国の給料を下げる」ことは難しいのでしょうが、 労働の生産性を高める余地はいくらでもあると思います。 私の経験から言えば、生産性が低い原因はいくらでもあります。

  • 仕事の上での文書による連絡が少なく、口頭連絡が多い。 従って、受取側が勘違いして、違うことをやってしまい、やり直しが多い。
    また、文書連絡があっても、ハングルで書かれていると、 意味の取り違いが多いのではないかと想像してます。 業務連絡で使われる用語は会話と比べて漢語が多いのは当然ですが、 全部の漢語を表意文字であるハングルで書いて、正しく意志が伝わるか、私には疑問です。
  • 日本文の場合は、漢語の意味が判らなくても、漢字一文字づつの意味は判りますので、 それらしい意味に伝わり、大きな誤りが起こりにくいですが、ハングルでは無理でしょう。
    また、判らないときに辞書を見る習慣が日本よりも少ないです。 なぜならば、日本語は「50音」で文字数が少なく、辞書を引くのが早いからです。 韓国は子音と母音が別の字(正確には文字の部品)ですから、辞書を引くのが日本よりも面倒です。
  • 自分の仕事はこれだけと範囲を決めてしまっていて、範囲外と判断したら、 全く、やらないばかりか、「それはやりません」とも言わない。 「やらない」と言えば、依頼者も他の方法を考えることができるのに..... 結局、時間を浪費することになる。
    これだけ進歩が早い世の中ですから、「役割分担表」に書いてない仕事はいくらでも発生するのは当たり前です。 グループのためとか、会社のためと言う感覚が少なく、個人主義が悪く出ている典型です。
  • 他人に対しては厳しいのに、自分に対しては甘い。
    作業工程で、自分のやったことに多少、問題があっても、次の工程に流してしまう。 最後の最終検査ではねられて、確認すると、「それでも問題無いと判断した」と言う。 まさに、ケンチャナヨ精神です。 思わず「判断するのはお前では無い」と机を叩きそうになりました。
    そのくせ、買った製品に少しでも傷があると、「金を返せ」、「新品に交換しろ」の 言いたい放題です。 これだけの厳しさを自分自身にも向けて欲しいですね。

私は縁あって現在、韓国に住んでいます。 友達も多く、対日貿易赤字の解消など、少しでも韓国に貢献できたらと思います。 その観点からも、本職が技術屋ですので仕事以外でも、 韓国の工業製品で何か新しいものを日本に輸入できないか見ています。 残念ながら、コスト、品質など、日本の市場で辛うじて受け入れられそうなのは、 メモリチップ、CRT/液晶ディスプレイ、などのパソコン関係のごく一部だけしかありません。

自動車の日本への輸出は全くだめでしょう。 世界最大の自動車メーカーであるGMのキャバリエでも日本の自動車市場では苦戦しているのです。 韓国車では全く勝負にならないでしょう(外観は結構、カッコいいですが)。 工業用材料でも、造船、自動車用の鋼板はどうでしょうか。 日本の会社は台湾の「中国製鉄」の鋼板に興味を示していると聞いています。 また、鉄道用のレールなどの特殊鋼はインドの追い上げがきついようです。

韓国産業に対する呉 光朝の提言
内政干渉になるといけないので、韓国が好きな一日本人のたわごととして、読んでください。

  • 第2次産業(製造業)は生産性の向上によるコストダウン、品質の向上をして、 世界市場に通用する製品を生み出さないと生き残れない。 21世紀には国内市場だけを見ている企業は、韓国のみならず、 どこの国の企業でも成長はしれている。 「日本に追い付け、追い越せ」、などと、日本しか見てないようでは、もう遅い (これは10年前のセリフで、今ごろこんなことを言う韓国人は、たかがしれている)。 世界に通用する製品、世界から信頼される韓国にならないといけない。
  • 第2次産業が問題点が多いのに対して、第1次産業(農業、漁業)はかなり有望と思います。 果物は安くて美味しいし、漁獲高は大きいです。 但し、魚の国内流通は鮮度保持技術など、 イマイチの感があります。 これを改善すれば、かなりいけるのではないかと思います。
  • 第3次産業の振興。 香港の雲行きが不透明ですが、上手にやれば、 世界の金融センターの役割を持つことができるのでは? ただし、国際的な信用を得なければなりませんが....

    観光産業の育成。 済州島や江原道など、風光明媚なところが多いですし、 アガシが奇麗なので、外国人相手のガイドや夜の歓楽街にも向いているのでは?

    人材の輸出。 21世紀には国境さえなくなるかもしれません。 社会的には問題が多いのですが(私はそう思う)、個人的には優秀な人が多いので、 芸術・芸能、スポーツなどの人材をどんどん海外で活躍させる。 LAドジャースの野茂の同僚の朴や中日の宣の活躍は、良い傾向ですね。 韓国の音楽やビデオ(特にAV)も日本の好事家から注目されているようです。


以上、日曜日で暇なので、長々と書きました。 ご意見があれば、お聞かせください。


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