1997年6月14日号

接待大国


先日、友人が韓国に出張してきました。 ソウルには1泊だけなので、 その日の夜に飲みに行く約束をしてました。 ところが、友人の訪問先でも、 1泊しかないチャンスですので、接待による会食を考えていたのです。 彼は私との先約があるとの理由で断ったのですが、VIPですから、 先方も引き下がらず、結局、私もそちらに参加することで落ち着きました。 私には全く関係が無い会社ですが、それでも参加してしまいました。

まず、型通りの高級ホテルにあるレストランで会食です。 それにしても、韓国という国は不思議な国ですね。 外国から来た客人を自国料理で接待しない、珍しい国の一つではないでしょうか。 辛いものを食べられない人に配慮しているのかもしれませんが、 韓国料理にも辛くないものはあります。 これだけナショナリズムが強い国なのに、 食べ物だけは外国人に押しつけないようです。

たびたび書いているように、私は各国に行ったことがありますが、 招待を受けると、自国料理へ案内されるのが普通です。 台湾の人は、必ず、中華料理へ連れて行きます。 但し、アルジェリアに行った時は、客人をつれて行けるような、 ロ−カル料理の店が少ないのか、ホテルのレストランで旧宗主国のフランス料理でした。 アルジェリアはフランスの植民地時代が100年くらい続いたので、 フランス料理が根づいてしまったとも言えるのです。 現地のコトバはアラビア語ですが、100年も植民地でいると、 正当なアラビア語を話す人がいなくなっており、フランスからの独立後、 イランやイラクから先生を招聘して、教育せざるを得なかったそうです。

食事が終わると、例によって二次会が待っています。 韓国の接待でニ次会が無いのは考えられません。 行ったのはル−ム・カラオケに分類される店です。 ル−ムサロンとどこが違うのか、 聞いてみましたが、値段が若干、安いくらいで大きな違いがないようです。 安いと言っても、日本人の感覚では非常に高いです。 とても普通の人のポケットマネ−では行けない店です。 お客は社用族か、成金でしょう。

こちらは総勢5人で、部屋に入ると、客人は中央の上座に座らされます。 しばらくすると、ママさんが、お客の数と同じだけのアガシを連れて入って来ます。 ただし、予算に制限がある場合は、入るときに必要なだけの人数を言えばいいそうです。

ママはすばやく、どの客が接待を受ける主役かを見てとり、一番の美人を私の友人の隣に 座るように配置し、その次の美人を、同じく上座に座っていた私の隣に配置しました。

あとは、ウイスキ−が出て、カラオケ/ダンスの嵐です。 ことろが、日本の歌を用意している店はまず皆無ですから、 日本から来た、ハングルの歌を歌えない客は「My Way」などの英語の歌を歌うしかないのです。 私は歌もダンスもできないので、もっぱらパ−トナ−のアガシと会話の練習です。

同じような店は過去にも何度か来たことがありますが、ときどき、 メンバ−の1人・2人が知らない間にいなくなっていることがあったのです。 その時は気分が悪くなったので先に帰ったのかと思っていました。 3回くらい、同じようなことが続いたので、おかしいなぁ−と、思いはじめたのですが、 あるとき共通点に気が付いたのです。 「消えた人のパ−トナ−のアガシは全て黒い服を着ていた」。 黒い服はこの種の店では「連れ出しOK」のサインではないかと思いました (確信はないですが)。

今回、友人の隣に座った一番の美人はなんと黒い服なのです。 早速、私は上記、仮説を実証してみたくなり、友人に「黒い服はOKだから、 アタックせよ」と耳打ちしました。 友人はそのアガシをいたく気に入ったようで、 密着ダンスや、席では抱きかかえるなど 俄然、ハッスルし始めました。 彼女は少し英語ができるのも幸いしました。 暫くして、私も酔っ払ってきて周囲のことが判らなくなっていたのですが、 気が付くと、友人とアガシがいなくなっていました。 どうやら私の仮説は「当たり」だったようです。 友人は翌朝の早い便で日本に帰りましたので、結果を聞いてませんが、 今度、会った時に聞いておきましょう。

あとから思うと、友人は、ここでは、VIPだったので、酒の勢いで、 連れ出したいとでも言いだした時に、「NO」のアガシでは恥をかかせることになります。 接待する側が「OK」のアガシを配置するように、最初から仕組んでいたのではないかと思います。 また、私がソウル駐在なので、「黒い服」を知っており、ケシカケルことも読んでいたのかも知れません。 彼らから言いだして、VIPが愛妻家だった場合、怒りだしてしまうことも考えられるからです。


友人がいなくなってからも、カラオケは続き、今度は、 3人のゲイボ−イが入って来て、テ−ブルの上でセミストリップです (ゲイボ−イの全ストはお金を貰っても見たくありません)。 5分くらいしかいませんでしたが、最後にチップを渡そうとすると、手渡しでなく、 パンティ−にお金を挟めとのことです。 言うとうりにすると、「ありがとう」 と日本語で言いました。

午前3時まで飲んで、勘定の時に計算書がチラッと見えましたが、 150万ウオンでした。 お客が5人ですので、一人当たり、日本円で4万円強です。


社用族が多いことに驚きますが、接待する方も「愛妻家」か「スキモノ」か、 まで想定してお膳立てしなくてなならないので、大変ですね。

私の想像の部分が大きいですが、冷静に考えると、 この種の店では数少ない「英語が話せるアガシ」だったり、 周到に準備されていたと思いますよ。


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