1997年5月29日号

日本食デ−


昼食はいつも社員食堂です。 あまり美味しくないですが、食券が無料で支給されるのと、 近くに美味しい食堂がないからです (経費節減で会社は家賃が安いところに引っ越しました。 気のきいた食堂がない地域です)。

社員食堂では定食が1種類だけで、メニュ−の選択ができず、毎日、 おしきせの韓国料理を食べています。 ところが、今日だけは日本食デ−とのことで、 日本料理の定食がでました。 日ごろ、日本文化を輸入することに神経質になっているわりには珍しいですね。 この会社の社長は親日家なのでしょう。

単なる社員食堂の一回の昼食にすぎないのに、数日前から宣伝のビラが張り出され、 「天麩羅」、「懐石料理」、「会席料理」などの説明が書いてあり、 大げさだなぁ−、と思っていました。 ところが当日になってみると、本当に大がかりなのです。

入り口には「うどん」、「焼鳥」と書いた「赤ちょうちん」がかけてあり、 日本式の「のれん」をくぐって入るのです。 室内には浮世絵の美人画や相撲取りを染め込んだ「のれん」、 歌舞伎で使う「唐傘」がたくさん展示してあるのです。

肝心の日本料理ですが、定食という制限にもかかわらず、盛り沢山でした。
マグロ寿司、のり巻き、焼き鳥、天麩羅、が少しづつ一皿に盛られ、 ドレッシング付き野菜サラダ(これは日本料理ではないですが)、 日本の味噌を使った味噌汁、ザルソバと盛りだくさんでした。 この一日だけの収支では多分、赤字と思われるくらいの内容でした。

肝心の味ですが、やはりどこか違っていて、折角、手間をかけたのに残念です。 原因は調味料やダシの使い方が下手なことのように思います。 毎日、唐辛子を食べていると、舌の感覚が麻痺してきますので、 日本料理のように、素材の味を大切にして、調味料は脇役に徹する微妙な味付けができないのでしょうね。
先日、日本に帰ったときも友人と話したのですが、 腕の立つ料理人は自分自身がグルメで「良い舌」を持っているのが絶対条件のようです。

それにしても、日ごろ、公式には「日本文化輸入禁止」を言いながら、 民間レベルでは歓迎されているのを再発見しました。


日本文化の輸入
「矮色(ウェ・セク)」を排除すると言って、韓国では良く話題になることです。 「矮」は日本に対する蔑称で、「色」は日本語で言うところの「風(ふう)」の 意味です。 つまり「日本風」と言うことです。

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