1997年4月19日号

韓国の鉄道


通勤途中で地下鉄2号線から1号線に乗り換えます。 1号線は国鉄線と 相互乗り入れしているため、私の乗る区間は全部国鉄区間です。 この路線は 韓国最大の幹線である釜山からソウルがある京畿道までを結ぶ京釜線です。 長距離特急のセマウル号もこの路線を走っています。

戦前は京畿道止まりでなく、先日書き込みました金日成の銅像が切り取られた 新義州まで通じていました。 詳細は知りませんが、新義州から鴨緑江を渡れば 南満州鉄道(満鉄)で、有名なアジア号(パシナ)が広大な満州の平原を 走っていたのでしょうか。 つまり、朝鮮半島を縦断し満州までつながる 日本の植民地経営の大幹線だったのです。

この釜山−新義州線は、軍事境界線で分断されていますが、38度線に近い 臨津閣にある公園の中に線路の最終点があり、1台のSLが置かれ 次のような説明が付けられています。

「俺はもっと先に行きたい。 昔のように新義州まで走っていきたい」
−−この鉄の馬の希望をかなえてあげたい−−

余談になりますが15年ほど前に東映京都撮影所の人と仕事で一緒しました。 中国でパシナが健在でそれを題材にした「赤い動輪」の撮影のためにかなりの数の スタッフが出張したそうです。 パシナはSLとして世界最高速を誇って いたそうですが何km/hくらいでたのでしょうか。 160km/hくらい かな? 蒸気の力だけで−−つまり水を煮立てて気体にしただけで−−それだけの スピ−ドが出るということは、ある意味では驚異ですね。 まあ、原子力発電所 だって結局、蒸気で巨大電力を発電しているわけですからあたりまえといえば それまでですが。

これらの鉄道のトレッドは全て標準軌(日本の新幹線と同じ幅)で日本国内 で使われている狭軌では輸送力に限界があることから、満州、朝鮮半島では 標準軌を採用したものと思われます。
韓国国鉄は戦後これらを受け継ぎ、現在でも統一しているようで、 その後に作られた地下鉄なども全て私が見た限り標準軌のようです。 列車の進行方向を逆方向に変更するのは莫大な費用がかかるので、自動車の 進行方向は現在の日本と逆の右側通行(つまり左ハンドル)になっていますが、 国鉄は日本の自動車と同じ左側通行です。 その後に建設された鉄道は 自動車と同じ右側通行になっています。
どうでもいいようなことかも知れませんが、ソウルの中でも混在しているので 駅のホ−ムで待っている時や踏み切りで期待していたのと逆から列車が入ってくると、 おやっと思うことがあります。

韓国では長距離旅行は高速バスが発達しているのと飛行機の国内線が安いので そちらに客を奪われているようですが、ときどきセマウル号が走っているのを みると乗ってみたいと思います。 高速道路でなく、列車の車窓からみる風景 も違った趣があるでしょう。

高速鉄道に関してもフランスの会社が落札したようですので、近い将来、 韓国の新幹線網も充実していくことでしょう。 ただ、別の国でフランス の会社による地下鉄工事が遅れに遅れている事実もありますので、心配な ところもありますが、国鉄当局の強力な指導のもとフランス式のチンタラ工事 をさせないよう期待してます。


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