中国の戸籍制度問題点

X氏の戸籍は、出生時は河南省の農民戸籍であったが、大学卒業時だけは人生でただ一回戸籍変更できる制度を利用し、浙江省寧波市の会社に就職したとき、寧波市の都市戸籍に変更した。中国では国民を戸籍地に縛り付ける意味合いが強く、10年ほど前は、出張で南部の都市に行くときも、寧波市発行の許可書が無いと飛行機に乗れなかった(現在は許可書なしで自由に行き来できる)。

農民は居住の自由が制限され、都市で就職先を見つけても、国内版ビザとも言うべき「暫住」の資格しか得られない。出稼ぎ農民(農民工)は、都市の戸籍を持っていないゆえに、雇用の機会が厳しく制限され、低賃金と長時間勤務といった劣悪な労働条件を強いられている。また、多くの名目で、税金や費用が徴収されるにもかかわらず、「暫住」の身分では医療や子供の義務教育をはじめとする都市住民が享受している公共サービスを受けることができず、失業しても失業保障の対象にはならない。

さらに、都市部で生まれた自分の子供も農業戸籍のままになり、都市戸籍(非農業戸籍)が与えられない。

X氏が将来受け取る年金も寧波市からになるので保険金は寧波市に支払っている。


中国の居民身分証

 

中国国民はクレジットカードサイズの写真入りのIDカード(日本の住基カードみたいなもの)の常時携帯を義務づけられている。そこには民族名を表す漢字が一文字で表記されており、漢民族であるX氏の場合は「漢」と標記されている。中国では現在56の民族が認定されているが、漢民族が全人口の92%を占めている。なお、清王朝を打ち立てた女真族は、漢人との同化が進み現在はほとんど消滅している。わずかに残っている女真族の人々のIDカードには、他の満州諸族とひとまとめにして、「満」と表記してある。