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  6080/6AS7単管PPステレオアンプの改良2

改造内容:

知人の業界の人で耳が良いと定評があるB氏にこのアンプの音を聞いて貰い、次のコメントを頂きました。

「何んとなく二つの音が合成されたように聞こえる。こういう音を好む人も多いが、やはり正攻法ではないように思う」

これを聞いたとき、ビックリしました。位相反転回路は、QUAD−Uの回路をベースにしていて、三つの位相反転効果を併用しているのです。このうち、「古典的位相反転回路」は、プッシュプルの片方に電圧増幅を1段余分に追加していることになるからです。耳の良い人が聞けば、追加されている一段分の音が聞こえてしまうようですね。私も日頃から、響きはいいが、今ひとつ音にスピード感が欠け、FET A級シングル無帰還に負けていると思っていましたので、改造することにしました。

改造の主点は、「古典的位相反転回路」を取り去ることです。こうするとゲインが6dB減ってしまうので、以前の7W7よりも増幅度(gm)が高い、ジーメンス社の通信用五極管である、C3gに変更しました。この真空管は通信用だけあって、ピンは金メッキされていますし、一個づつにシリアル番号が印刷されています(写真参照)。私の回路ではバランス調整のボリュームを付けていないので、手持ちの12本の真空管をとっかえひっかえしてバランスの取れる球を見つけました。結果的には連続するシリアル番号のものが良かったですね。

手持ちのアンプでは、このアンプの音が一番良いので、「A&Vフェスタ2009」の「自作オーディオ自慢大会」に応募しました。これを機にさらにチューンナップを加え、内部配線を大幅に修正しました。それに伴い一部部品定数も変更しています。ノイズ対策も以下のように強化しました。

*ACラインフィルタの筐体をシャーシーから電気的に浮かし、外部のノイズをシャーシーに取込まないようにした。

*パイロットランプをネオンランプから白熱ランプに変更して放電のノイズを減らした。

*トランスのすべての二次巻線に並列にノイズカットのためのコンデンサーを入れた。

*シャーシに電流を流さないように、GNDラインを電気的にシャーシーから浮かして配線し、接地したのは、入力抵抗である51KΩのコールドエンドだけにした。

配線が良くなったおかげでS/Nが良くなり小さな音も前よりもくっきり聞こえるようになりました。最終回路を以下に示します。

 

変更後の回路図(2009.01.21現在:

 

カップリングコンデンサーは、以前から以下のものに交換しておりました。

オークションで落札した写真のコンデンサーは、本来の用途はオーディオ用ではなくて高周波・大電流の用途の物ですが、以下に示すメーカーWebの規格表を調べたらオーディオ用にも使えそうなので使ってみました。耐圧1,250V、 0.1μFのポリプロピレン・フィルムコンデンサーです。

http://www.chemi-con.co.jp/pdf/catalog/fi-1003l/fi-hacd-j-070820.pdf

試聴結果:

音にスピード感が感じられるようになり、かつ適度な余韻をもった音を出します。以前から低音の押し出し感は充分満足できるレベルでしたが、改造により中音域にスピード感が出たので、相対的に低音の押し出し感がよりはっきりと認識できるようになりました。別項に書いている、E−Linearアンプとは違った音ですが、こちらの方がどんなジャンルの曲でもこなせる点が有利かと思います。


以下のURL示す、ある真空管アンプメーカーでは300Bよりも6AS7の方が良い音がすると言っていますが、今回の改造で確かに良い音がする球だと言うことがわかりました。やはり、レギュレーター用三極管の低いインピーダンスでドライブする迫力は、他とは違う何かがあるようです。

http://www.audiotekne.com/

 

(2009.1.21)


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