VT−4C (211)シングルステレオアンプ |
アンプの概要:
26年前(1982年)に作った真空管アンプです。それまで6BQ5や6CA7など一般的球でPPアンプや半導体アンプばかり作っていましたが、武末数馬さんの記事でシングルの音が良いと書いてあったのを見て、このアンプの製作を思い立ちました。このアンプは近所の真空管アンプ愛好家の家に無期限貸与中ですが、最近おじゃまして写真を写してきました。26年前と変わらず良い音で鳴っていました。
70年代の中頃からアメリカ製の球を業者が輸入を始めたようで、秋葉原でもかなりの種類が売られるようになりました。このアンプに使われているVT−4Cもそういった球で、米軍の倉庫に長い間、予備球として保管されていたものと思われます。写真に示すように1941年11月に米軍通信隊に納入されたものです。つまりパールハーバーの1ヶ月前と言うことになります。
アンプの構成:
森川忠勇さんが「無線と実験」に発表した『211 A2級シングル』の記事とほとんど同じ構成のアンプキットが秋葉原の「三栄無線」から発売されていましたので、交渉してそのシャーシーだけを売って貰いました。シャーシーが決まり回路構成は大幅な変更はできませんので、森川忠勇さんの原回路から以下の二点を変更しました。
変更点 |
変更内容 |
変更理由 |
出力トランス |
タムラF2005に変更 |
あこがれのタムラを使ってみたかった |
ドライバ真空管 |
6FQ7に変更し定数も変更 |
特性曲線を見ると直線性が良いから |
増幅構成は以下のようになりました。
1/2 6FQ7:電圧増幅 -直結-> 1/2 6FQ7:電圧増幅 -C結合-> 1/2 6FQ7 カソフォロ -直結->VT-4C
VT-4Cのグリッドから初段カソードに向けて4dBの負帰還を施しました。オーバーオールの負帰還はかけていません。
カップリングコンデンサーは、スプラグ社製の『ビタミン−Q』を、B電源の電解コンデンサーは、ニチコンの『ゴールド・シリーズ』を使いました。これは、「無線と実験」が開催した「読者製作アンプ聞き比べ会」にFET式プリアンプを持って参加したときにお土産で貰ったものです。
音質について:
それまでのPPの負帰還アンプや半導体A級アンプとは全く違う音に感激しました。特に「音が前に出てくる」ということが音質の良いアンプの大きな条件の一つだということがわかりました。以後、「もうゴールに達した」と感じて新たなアンプを作る気がなくなってしまいました。それ以来26年間は、電子工作、真空管ラジオで過ごし、真空管アンプは2007年まで作りませんでした。昨年からまた真空管アンプを手がけていますが、現在の目標は、VT-4Cや300Bなど定評がある直熱三極管を使わず、値段が安い傍熱管を使い、回路的な工夫をこらすことによってなんとかそれらを凌駕するアンプを作りたいということです。
VT-4Cや6FQ7は今でも入手可能ですので、友人宅で末永く良い音を出し続けて欲しいものです。