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 D級アンプで真空管サウンドを!

低電圧動作ヘッドアンプ

1:概要

真空管アンプの「音の味」について、いろいろな説が流布していますが、中でも「適度な歪み」が味付けになっているとの説は有力です。この説に従い、適度な歪みを持ったアンプ目指して製作しました。

本器はトップに真空管を使った「歪み発生器」として配置し、別途用意するD級パワーアンプに音楽信号を流し込めば、「真空管サウンド」が楽しめる、との狙いです。

回路シミュレーションにより、トップの真空管を24Vの低電圧動作させれば、適度な歪みが得られそうなことが判りましたので採用しました。

2:回路説明

24Vの電源電圧でプレート電流として最低でも1mAは流れそうな真空管を規格表から探し、名うての低インピーダンス管である12B4Aを使うことにしました。往年の名器「フッターマンH−1 OTLアンプ」に採用された球だけのことはあり、7mAくらいの電流が期待できそうなことがシミュレーションで判りました。

7mA流れてくれれば、プレート負荷抵抗として1KΩ位を使うことができ、出力インピーダンスを充分低く抑えることができ、出力のバッファーアンプを省略することができます。

バイアスは、固定バイアスにしました。一見、カソードバイアスのような回路ですが、2本の12B4Aのヒーターを直列に接続し、電流=300mAを1.1Ωのカソード抵抗に流し込むことにより、0.33Vのバイアス電圧が得られます。パスコンは3,300μFを使いました。

12B4Aはグリッドが2番ピンと7番ピンに接続されています。グリッドがカソードの近くに配置されているため、ヒーターからの熱をピンを通じて放熱するためです。カソードに近いためグリッド電流が流れやすいと推測されます。今回のバイス電圧であるマイナス0.33Vでは少し大きな信号入力があるとグリッド電流が流れると予想されます。それも一つの歪み発生要素と考えれば、今回の目的のために積極的活用も考えられますが、私の好みに合いませんので、今回はグリッド電流が流れてもバイアス変動をなくすため、入力トランスを採用しました。グリッド側の巻線抵抗は実測値で240オームでした。

12B4Aのヒーターは2本を直列にして24V電源に接続しました。

3:使用部品

回路が簡単なので部品には少しこだわりました。

*ACアダプタ: 
昔のMacノートPC用の24V出力のACアダプタを使いました。 AC入力は100V−240Vのフリーボルテージですから外国でも使えます。

*入力トランス
タムラのTpAs ISを使いました。

*SAタイプOSコン:
今はなき三洋電機の傑作SAタイプOSコンを24Vの電源ラインに追加しました。

*Dale巻線抵抗:
プレート負荷は音が良いと評判のDaleを使いました。

*ケース
ハードオフを物色し、手頃なサイズのAV機器を購入し、中身を取り外し、電源スイッチやRCAジャンクなど外装部品を流用しました

*ボリューム
入力トランスが600Ω用なので、インピーダンスが高すぎると低域特性が悪化します。10KΩBカーブの二連ボリュームが入手できたので2.2KΩを抱かせると、2KΩ Aカーブのボリュームに近い特性が出ます(回路図参照)。
二連ボリュームはAllen-Bradley製を使いました。

4:測定結果

ヘッドアンプのゲインは約3倍です。D級アンプを付加したトータルの歪み特性を以下に示しますが、THD=2%@1Wは、今まで作ったアンプとしては最悪値です。予定どおり歪み発生器として動作しています。最大出力は、9W@8Ωです。

音楽を聴いた感じは、ヘッドアンプ無しのD級アンプだけに比べ、響きが少し加わり暖かみが出ます。狙いどおりに仕上がったようです。